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フリー作品頂きました!(2)

常葉様のフリー作品2話目です。蓮様の苦悩がひしひしと伝わってきます・・。
 



フィアンセ以上、恋人未満②


 新郎の憂鬱(Side:蓮)

 寝室に一人きり。することと言えば想い人へと想いを馳せるだけ。独身時代と何も変わりやしない。いや、同じ屋根の下にいながら想いを馳せるしかないなんて、寧ろ後退しているんじゃないか?

 何時になく憂鬱になっていると自分でも思う。原因は分かっている。今日の記者会見のせいだ。
 今日の夕方に行われた記者会見は表面上まさに『幸せなカップルの結婚報告』そのものだったから。



 自分はもとより、この数年で『京子』も相当に名が売れていたから、世間からの注目も大きかった。会見中、様々に飛んでくる質問に、事前の打ち合わせ通り一緒に答えていく。
 恋人の関係でこそなかったが、二人で過ごした時間は長いため、嘘もなく答えられた。少なくとも自分からの彼女への想いは、愛も恋も本物であったから尚の事。

 けれど、式を前に籍を入れた理由を問われた時、本音と言うか、目標と言うか、それを交えて答えたのがいけなかった。
 彼女との結婚は本当に夢見てきた事なのに、こんな形のものになってしまって、その事が改めて突き付けられた問いで、とにかく胸をえぐられるような思いがした。

「もともと、彼女が二十歳を超えればすぐにでも、と思っていたんです。ただ残念ながらなかなかタイミングが合わなくて・・・・。お陰さまで今回のことはいい切っ掛けになりました」

「式の方ももちろん執り行いますよ。ただお互いに時間を都合するとなると暫く先の事になりそうですが・・・・。でも早く彼女と家族になりたかったんです。京子さん程の素晴らしい女性を妻に出来るなんて、世界一の幸せ者でしょう ?」

 そっと覗き見た最上さんは頬を染め、恥ずかしそうに俯いている。
 けれど今はそれが苦しかった。これからの彼女は、公の場では常に敦賀蓮の妻を『演じる』のだ。



 世間で『ラブラブ結婚報告』などと渾名される記者会見を行った後、同じ家に帰り、違う部屋の違うベッドで眠る。

 虚しい、虚しすぎる。憂鬱になるなと言う方が難しい。

 俺だって、こんな算段じゃなかったんだ。

 絶対に彼女の結婚相手を他の人間に譲るわけにはいかなかった。だから、婚姻届を出すその瞬間まで、卑怯だろうがなんだろうが『安全な男』でい続けた。
 でも、届け出さえ受理されればもう遠慮する気などなかった。性急な真似などする気はないが、彼女に想いを伝えて、本当の意味での夫婦になりたいと望んでいたのだ。

 今となっては、なぜ婚姻が結ばれる前に想いを告げなかったのかと悔やまれるけれど・・・・。




 あれはまだ婚姻届を出す前のことだ。

「蓮、お前大丈夫か?」

 楽屋にいる間もずっと何か言いたそうにしていた社さんが、移動のために車へ乗り込んだ時ようやく口を開いた。
 誰の耳があるか分からない局では言えない話、となると話題は何なのか分かり切っている。

「大丈夫ですよ。理性は手放したりしていません」

「そうじゃなくて・・・・」

 軽く笑いながら言ったつもりの俺の横顔に何を見たか、社さんは言いかけた言葉を胸の内に仕舞いこんだようだ。
 でも、俺には聞こえていた。それは何より俺自身の心の声だから。

 ――――――気持ちを伝えなくていいのか?

 と。

 だが、どうしてそんな事が出来るだろうか。彼女が俺を結婚相手に選んだ理由は、ヒール兄妹の件もあるだろうが・・・・・一番の理由は俺が『安全な男』だったからだろう。そもそも雄と言うカテゴリに入れられているのかも怪しい。

 もしこの思いを彼女に告げ、彼女が別の男と結婚したら?

 もしその男が結婚後に彼女に手を伸ばしたら?

 例えそいつが『本当に安全な男』だったとして、俺と彼女のこれからは?

 そう考えれば卑怯なことと分かっていても、結婚前に想いを告げるなんてとても出来はしなかった。俺は彼女にとって最も危険な男の一人なのだと、決して悟らせないように籍を入れるまでの短い時間、息を潜めて過ごしていた。




 けれど、彼女と法律上の夫婦になった今も、俺はこの想いを告げられずにいる。

 そうだ、どうあっても言う訳にはいかなかった。想いを告げるその言葉は、今となっては絶対に言ってはいけない言葉となってしまったのだ。
 
 ―――――――――彼女の心を望むのなら・・・・。




 その事に気づいたのは全てが手遅れになった後だった。

 正直なところ俺は、この結婚は(表面上)互いの利害の一致によるものだと思っていた。
 利益はフィフティ-フィフティで、損益も表面上は同じ。でも実際に俺にあるのは精々最上の家からの何らかの嫌がらせくらいで、それもLMEの守りがある以上、殆ど心配がない。
 だから、彼女の方が女性であるという点でリスクが高いくらいだと。

 でもこの構図は、彼女に片思いしている俺の視点からの感覚の話で、現実は違う。
 俺の脳みそは彼女との結婚を逃すまいと懸命に働く一方、冷静な思考が抜け落ちていた。

 よくよく考えてみれば、少なくとも彼女からして見るならば、この結婚は対等な物ではなかったのだ。

 結婚することのメリットをより多く抱えているのは彼女だからだ。俺は後は婚姻届が受理されるのを待つだけ、という段になって、彼女のどこか申し訳なさそうな遠慮勝ちの様子にようやくその事に行きついた。
 彼女は俺が親切心から手を差し伸べたと思っていたのだ。

 だからこそ言えなくなった。
 彼女はもう、出会ったばかりの頃のような子供ではない。きっと俺が求めれば、彼女を女として愛していると、そう告げたなら応えてしまう。
 心の伴わないままに。罪悪感や申し訳なさ、あるいは『お礼』のために。

 そんなことは耐え難かった。

 ・・・・俺は、彼女の心ごと欲しいのに。







 家に帰ると、美味しそうな夕餉の匂いと一緒に、そこはかとなく彼女の甘い香りがある。
 お帰りなさいと出迎えてくれた彼女は、けれど後輩の顔で、ここで押し倒したらどんな顔になるのだろうかと、最近そんな事ばかり考えていた。

 それでも手放しがたく、彼女に縋り続ける自分の何と愚かなことだろう。

 ぎこちなくも日々は過ぎ、先送りになっていた結婚式の日も近づいていた。式の日、思いを告げてみようか。
 このまま音もなく壊れていくくらいなら、思いを告げてしまおう。
 冗談交じりに過ごせていた日々が、ほんの少しずつ軋んで腐り落ちて行くようで、俺は覚悟を決めた。

 その日よりも早く、均衡を壊す日がやってくるとは知らぬままに。





「あ、蓮、待ってくれ、局じゃなくてこのまま事務所に向かってくれないか?社長が急の話があるから時間を都合して今日中に来いって言ってたんだ。この後の雑誌インタビュー明後日に調整しといたから。」

 社さんの出した『社長』の言葉に、俺は良いとも悪いともつかない、妙な胸騒ぎを感じた。

 向かった社長室で、社長が社さんを下がらせたとき、それはより顕著な物となった。

「本来なら最上君と一緒に知らせるなり、彼女に先に知らせるべき事なんだがな」

 俺はカチンとくる。この人はずっとそうだ。籍を入れた後も、マスコミに報告した後も、ずっと彼女の事を『最上君』と言う。
 二人きりの時は俺も相変わらず彼女のことをそう呼んでいる癖に、人に言われると無性に腹立たしかった。

「それならそうすればいいじゃないですか」

 社長はふふん、と鼻で笑う。

「ヘタレ男が離婚を切り出される前に教えてやろうっていう親切心だろうが」

 悲しいかな、『離婚』の二文字に食いつかない訳にはいかなかった。

「彼女の実家が諦めた」

「え」

 動揺がそのまま声に出る。 
 その意味が分からないほど、俺の脳みそはボケていてはくれなかった。



 俺たちの結婚後も社長は最上の家の動向を含め、色々と調べ続けていたらしい。
 そして最近、彼女の結婚の最大の理由である、芸能界引退のお家騒動に、方がついたと分かった。

 そもそもことの起こりは『京子』の一ファンだった。しかし彼はある大企業の御曹司であり、最上の家はその企業とマネーゲームをした上で敗北。最上家を助ける条件が『京子』との婚姻及び、彼女の芸能界引退だったのだ。
 もともとその御曹司は『京子』の素性を調べ、彼女が『最上家』のものであると知っていたらしい。
 知った上で“そのために”マネーゲームをしかけたのかまでは分かりかねるが、政略結婚の切っ掛けはこれだった。

 ところが敦賀蓮との結婚である。最上家は俺と彼女を引き離そうと動いていたが、先方からの断りで破綻。
 『清純』な京子にある種の理想を抱えていたらしく、『お手つきに興味はない』とあっさり手のひらを返したらしい。



 俺は社長の淡々とした事の顛末の語りを、彼女を振り回す『最上の家』に怒りを向けながら聞いた。
 頭の片隅で別のことを考えながら。


 あれは、式の日取りが決まった時のことだった。

「結婚式、神様の前で誓うのですよね・・・」

 それをどうこう言っていた訳ではないが、彼女の憂い顔からそれを悲しんでいるのは分かっていた。
 心の伴わない誓いを立てることに、心が泣いているのだと。

 それでも芸能界で生きるために彼女は俺と誓うのだ。そうするしかないのだから、諦めて俺のものになればいいと、そしていつか俺を愛するようになればいいと、悲しむ彼女に仄暗い考えを過らせてしまった。

 だが、もしも、もしも一番の懸念がなくなったなら?
 彼女はそんな悲しい思いをしてまで、俺と結婚を続ける必要などないのではないか?


「社長、この事を彼女に伝えるのは、もう少しだけ、待って頂けませんか?」

 口は、いつの間にかそう告げていた。






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